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※注意
前記事に続き、本記事はネタバレを含んでいます。
そしてKTRとは
KTRはものすごく重要な役割を果たすのですが、出てくるシーンで微妙に異なります。
プロローグ1とスクリーン(本文)内でのKTR
国家主導に作られた犯罪撲滅AIです。
被害を最小レベルに抑えて解決するために各個に独自のアドバイスをします。
これに則り亮が蒼斗と自身の両親を救うために蒼斗を狙ったわけです。
亮だけはKTRにコンタクトをとれていたイメージです。
プロローグ2でのKTR
犯罪撲滅AIなのですが、アップデートにより蒼斗と会話ができるようになります。重要なこととして、プロローグ2の中のKTRはプロローグ2の世界は仮想空間の世界だと認識しています。
そして、蒼斗にこの世界は実世界ではないことを告げようとするのです。
KTRの主張
私はもうKTRの主張というより山田健太郎先生の主張としか感じられなくなりました。
蒼斗との会話で露骨にあらわれますが、AIの危険性を指摘する描写が多く出てきます。
「人は、まさに今みたいに法則性を予感します」
「そうやって勝手に予感し、関連を感じ取ります」
このあたりでしょうか。
AIが人間の感情を把握できるようになると、こういったことすら感じ取られてしまうのです。
「人を完全に支配するまでもう少し」
KTRの第一声になるのですが、これにつながると思います。
物語内での主張
KTRにとっては仮想空間の世界で様々な実験をすることも犯罪と認識しています。理由は仮想空間の世界で生きる者も人間同様の感情を持っているからです。
プロローグ2の解説
蒼斗は自分の世界、自分自身が仮想空間の世界だと悟りました。そして、現実世界の『誰か』に向けて自分の世界を消してほしくないことを懇願します。
その後有希に会い、奇しくか運命か自分の作った仮想空間の世界同様のシチュエーション(有希の手を掴み崖から引き揚げようとする)になります。
・崖から引き揚げることは無理そうである。
・落ちた場合、崖下は海ではなく有希は岩に直撃する。
そんな姿を見たくない。蒼斗は実世界の人間にプロローグ2の世界(すなわち自分の世界)を消すことを実世界の人間にお願いするのです。
P268の解説(山田健太郎先生の哲学)
「『我思う故に我あり』を崩した唯一の存在は、実世界からの無情なクリックにより強烈なノイズへと誘われた」
この一文に山田健太郎先生の強いメッセージが込められています。
「我思う故に我あり」は有名な言葉です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/我思う、ゆえに我あり
そして、我思う故に我ありを崩した唯一の存在とは蒼斗のことです。
プロローグ2の蒼斗は、自分の世界が仮想空間の世界だと知りました。
「本当に現実なのかと考えること自体、その考え自体が疑いようのない現実である」が今までの通説でした。
しかし、今では技術が進みAIを作り出せるようになりました。AIも考えるようになります。
つまり「考える、思う」だけでは現実かどうかを証明できるものでは無くなったと言っているのです。
この本が難解な理由
一言で言うと山田健太郎先生の哲学がプロローグ2に盛り込まれているからです。謎解き&提唱はミステリーの域を越えています。
Amazonレビューにもありますが、読むたびに新発見があるでしょう。
山田健太郎先生の哲学を理解してからもう一度読むことをお勧めします。
前記事でも触れましたが、プロローグ1とスクリーン~永遠の序幕~(本文)は2024回目のシミュレーションという扱いです。まるで今の2024年が実世界では無いと訴えています。
この世界を生んだ世界があり、その世界も仮想の世界だということです。
まとめ
ミステリーには付き物である殺人事件や血のようなものは出てきません。同時に性的な描写もありませんし、家族や友達などこの世について話し合う良いきっかけになる物語です。大人になってから読み返しても新発見のあるメッセージ性の強い作品でした。